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このため、近年、多くのアメリカ企業が、EVAないしそれに類似した指標を経営目標として掲げるようになっており、なかには年次報告書でEVAの実績を開示する企業も出てきている。
また、最近、わが国でもEVAないしそれに類似した指標を経営管理指標に掲げる動きが出てきている。 例えば、新聞で報道されている企業名として、K、川崎製鉄、S、M電工、HOYA、M商事などがあげられる。
5、2EVAを高めるための施策。 では、EVAを高めるためには企業はどのような施策をとればよいであろうか。
EVAは次の式で計算された。 EVA税引営業利益一投下資本×加重平均資本コスト。
したがって、この式に従うとEVAを高めるためには、次の3つの方策があることがわかる。 @営業利益を高める。
A投下資本を減らす。 B加重平均資本コストを下げる。
ただし、@とAはしばしば両立しないことがある。 例えば、生産原価を下げるために生産性の高い新鋭機械を導入したところ、投下資本の増大によってかえってEVAが悪化してしまったり、製品1単位当たりコストを下げるために生産数量を増やしたところ、在庫の増加を招いて投下資本が増えてしまうことがありうる。

このため、営業利益と投下資本を別々にとらえるのではなく、むしろ次のEVAの算式に従って、ある施策が資本コストを上回る投下資本利益率をもたらすか否かを判断の基準にすべきであろう。 EVA投下資本x(投下資本利益率一加重平均資本コスト)。
このように考えると、企業が事業活動によってEVAを改善する方法は次の3つに大きく分けられる。 @追加の資本投下をおこなわずに営業利益を増加させる(既存事業の投下資本利益率を高める)例えば、上述の例で、製品のコストを下げるために生産数量を増やすと在庫(投下資本)が増加し、EVAが悪化するようであれば、むやみに生産数量を増やすべきではない。
このように、従来、生産部門はとかく製品のコストや売上利益率に目を向けがちであったが、EVAを導入すれば、価値創造の観点から最適な生産規模や生産方針を決められるようになる。 A追加投資をおこなう場合には、投下資本利益率が資本コストを上回る投資のみをおこなうこれはすでに述べたように、投資決定の基本であるが、これまで多くの日本企業はマーケットシェアや売上高、利益の拡大を経営目標に掲げてきたために、資本収益性が軽視されてきた。
今後は、資本コストを十分意識しての投資決定が要求されよう。 B資本コストを上回る投下資本利益率を確保できない事業から撤退するこれまでわが国では、収益性が低い事業があっても、例えば創業以来取り組んできた事業であるといった事情から、大胆な事業撤退ということをおこなってこなかった。
1980年代までは、日本企業には撤退戦略がなかったといえるであろう。 このように低収益の事業を温存してきたことが、現在、大規模なリストラクチャリングが必要になった理由のつになっている。
現在、多くの日本企業は資本収益性を高めるために、リストラクチャリングやアウトソーシングなど事業構造の見直しをおこなっているが、その方針を立てる上で上記のEVAの基本算式は有益であるといえるであろう。 ところで、EVAの基本算式には、もうつ加重平均資本コストが出てくる。

もし、これを下げることができれば、EVAを高めることに寄与することができる。 資本構成を変えると加重平均資本コストがどのように変わるかについては、すでに第8章で説明した。
これまで日本企業は、1970年代後半、オイルショックにより低成長経済に移るとともに、減量経営を指向し、借入金を返済し、金利負担を減らす政策をとってきた。 それ以来「企業の株主資本比率は高いほうがよい」という考え方が主流になってきた。
しかし、資本コストやEVAの考え方にもとづけば、事業面で収益性向上策をとるとともに、財務面では、適度な規模の負債を利用し、資本コストを下げることが重要になる。 ただし、負債コストのほうが株主資本コストより低いからといって、あまりに負債依存度を高めすぎると債務不履行や倒産の可能性が高まり、負債コストやさらには株主資本コストまでが高まり、加重平均資本コストが高まってしまうことになる。
したがって、社債の格付けなども考慮しながら適切な規模の負債を利用することが、加重平均資本コストを下げ、EVAを高めるための財務部門の課題といえるであろう。 5、3EVAを活用した子会社・事業部管理。
EVAは、企業全体だけではなく、各事業部門の業績管理に用いてこそその神髄を発揮するといえる。 各事業部門の投下資本や損益をもとにEVAを計算し、各事業の拡大・縮小・撤退の判断に使うのである。
多角化企業の場合、部門ごとに事業リスクや資本コスト(必要収益率)が異なるので、単に投下資本利益率の大小で各事業の評価をおこなうことはできない。 各事業の資本コストを適切に定めることができれば、部門ごとのEVAも計算でき、各事業が価値を生んでいるか否かを判断することができる。
子会社や事業部の管理にEVAを用いる場合には、単純に全事業部門にプラスのEVAを要求するのではなく、プラスのEVAをあげている事業部門はさらなるEVAの向上を課題とし、EVAがマイナスの部門には、何年かかけてEVAをプラスにするような目標を与え、この目標が達成できなければ、撤退するという方法が考えられる。 例えばM商事は、自社の事業部のみならず子会社や投資先の会社についてもEVAを算定して、事業の拡大・縮小や投資回収の判断に用いる方針を打ち出している。
5、4EVAと連動した報酬制度。 アメリカ企業では、企業や事業部があげたEVAとリンクさせて経営幹部の報酬を決定することがしばしばおこなわれている。
EVAの提唱者であるS杜もEVAを単に業績評価基準として用いるだけでなく、経営者の報酬をEVAと連動させて決定するようにすれば、株主の利益と経営者の利益(報酬)とを一致させることが可能になり、企業価値を創造する企業経営を推進できると強調している。 株主の利益と経営者の利益(報酬)とを一致させる方策としては、EVAに連動した報酬制度以外にストックオプシヨン制度がある。
S杜は、ストックオプション制度の問題点として、現実の株式市場で形成される株価は、単に企業の業績動向だけでなく、経済全体や金利の動き、株式市場全体の動きの影響も受けることをあげている。 したがって、経営者の報酬を直接、株価と関連させるよりも、EVAの水準と関連させたほうが、より正確に経営者の報酬と企業の理論価値の増加度合いとを関連させることができる、とS社は主張している。

株主価値を創造するためには、企業は経営資源を新規事業や成長事業に振り向けるとともに、不振事業のテコ入れや撤退をおこなう必要がある。 特に連結決算制度が強化され、企業評価が基本的に連結ベースでおこなわれるようになると、親会社単体のみでなく、企業グループ・ベースで経営資源を最適配分する必要性がより高まる。
本章では、株主価値創造のための新規事業創出策と企業グループ・ベースでの資源配分のあり方について説明する。


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